1. 先延ばしという人間の癖
時間を有効に使おうという時間術において、先延ばし癖というのはやっかいな存在です。
アメリカの心理学者、ジョセフ・フェラーリ氏の研究によると、アメリカ人の20%の人々は先延ばしが慢性化しているようです。
「物事を先延ばしにしてしまう」というのは自分にも心当たりがあるものです。
なぜ人は先延ばしをしてしまうのでしょうか?
2. 先延ばしの2つの原因
企業家のケビン・クルーズ氏は、先延ばしには大きく2つの原因があると述べています。
1つはモチベーションが低い。
これは単純な理由で説明はいらなさそうですね。
もう1つが未来より現在の願望が強いという心理を理解しないまま計画を立てる。
例えばダイエットのために「甘いものは控える」と誓っても、いざ目の前にケーキがあると食べてしまう。
この人は、未来の自分が「甘いものは控える」と誓っただけでケーキを食べない精神力があると思いこんでいます。
そしていざ目の前にケーキが出てくると「やっぱりダイエットは明日から」と先延ばしにしてしまう。
人は未来の自分が欲望に負けないと思いこんでしまう節があります。
「そのくらいの誘惑には勝てるだろう」と未来の自分を大きく見積もる。
そうやって立てた計画は実際うまくはいかないものです。
「今この瞬間」になってみると、思ったよりも誘惑は強いものです。
この心理を現在バイアスと言います。
先延ばしには現在バイアスの心理が大きく関わっています。
3. 先延ばしを克服する6つの方法
そんな先延ばしを克服する方法を挙げていきます。
①現在バイアスを想定する
「甘いものは控える」と誓っても、いざ目の前にケーキがあると食べてしまう。
現在バイアスを想定して逃げ道を断つことが対抗策になります。
「甘いものは控える」と誓ったのなら、ケーキを冷蔵庫に入れておかない。コンビニに行かない。
「ケーキを食べようか、どうしよう」という誘惑の選択肢の場にそもそも立たないようにするのです。
②「良いこと・悪いこと」を考える
ダイエットのために甘いもの控える。
ダイエットが成功したらどんないいことが起こるだろう?
ダイエットをしなかったらどんな嫌なことが起こるだろう?
こんなふうに、「良いこと・悪いこと」を考えるようにします。
ポイントは、「良いこと・悪いこと」が無意識に浮かぶくらい習慣化していること。
たまに考えるくらいでは弱いです。
③周りに言う
周りに公言するのも自分の言い訳や逃げ道をなくすのに有効手段。
④損失忌避の心理を利用する
100円増える嬉しさより、100円なくす嫌な気持ちのほうが感情の動きが大きいです。
人は利益より損失のほうに敏感になる傾向があって、このような心理を損失忌避と言います。
目標設定の際に「達成できたらこんないいことがある」というアメと同時に「しなかったらこんな嫌なことがある」というムチも計画しておくことが有効です。
⑤なりきる
心理学的に、「こうなりたい」と思うより「自分はすでにそうなっている」と考えたほうが臨場感があり物事を達成しやすくなります。
「ダイエットをして適切な体重になりたい」と思うより、「私はすでに理想的な体重をキープできている」と考えた方が今食べる物をセーブできます。
明日からではなく今日からやるというのはよく言われますが、「目標を達成できた自分になりきる」というのは今この瞬間から行動を起こすためには有効なマインドセットです。
⑥完璧を求めずとりあえずやってみる
完璧を求め過ぎると挫折します。
「とりあえずサラダを1口食べる」
「とりあえずコンビニに寄らずまっすぐ家に帰る」
「とりあえず運動着に着替えて外に出てみる」
良い意味で妥協することが継続には大切です。
4. まとめ
以上からまとめです。
先延ばしを克服するには、
達成できたときの良いことと、できなかったときの悪いことを自覚する。
その上で「目標をすでに達成できた自分」になりきる。
周りに公言したり、誘惑を物理的に絶って逃げ道をなくす。
完璧主義にならず、とりあえずやること・継続することに価値を見出す。
といった感じです。
5. その他の記事
後回しを克服する方法、人の記憶に残る方法 ~ツァイガルニク効果~
6. 参考資料
ケビン・クルーズ『1440分の使い方』パンローリング株式会社、2017年