「時間がない」を逆手に取る時間術

多くの人が「時間がない」と感じています。
そしてうまく時間を使いたいと感じています。

今日は「時間がない」ことに関する心理学的な示唆をまとめます。


仕事は与えられた時間いっぱいかかってしまう


1時間かけて作った書類も、「30分しかないから急いで作って」と言われればなんとか30分でできてしまうものです。

このように、
「与えられた時間やお金は使いきってしまう」という人間の性質をパーキンソンの法則と言います。

人は物事によって所要時間を決められているのではなく、所要時間に合わせて物事を進めているのです。

「この書類を1時間で作って」と頼まれるのではなく、
「この書類を30分で作ります」と自分で所要時間や締め切りを先に決めてしまうのです。

先に時間を決めてしまえば、その時間でなんとかなるものです。


会議は後半から有益になる


パーキンソンの法則から、会議が所要時間より早く終わることが少ない理由がわかります。

1時間あれば会議は1時間かかってしまうものです。

前半は雑談やさして重要でない点の話に行きがちです。
そして後半になってくると、時間が迫って来るので急に核心的な話に話題が移行します。

このような傾向はしばしば「中間軌道修正」と言われます。


時間がないと、消防士すらシートベルトを忘れる


「時間がない」ということは、初歩的なミスを誘発します。

海外の統計ではありますが、
消防士の死亡要因の20~25%は交通事故です。

消防士にとって交通事故は大きな死亡要因の一つです。

交通事故で命を亡くした消防士の79%はシートベルトを着用していなかったそうです。
交通事故で死亡に至るケースでは、車がぶつかった衝撃でドアが開き、そこから投げ出されてしまうことに起因するものが多いです。

火災現場に急いで向かうという時間のなさが、シートベルトを着用するという初歩的な行動を見落としてしまうのです。

このように、ある物事に集中しすぎるあまり
他のことが見えなくなる心理状態をトンネリングと言います。


限りあるから集中できる


心理学の実験で、被験者にシューティングゲームをしてもらった実験があります。

被験者は2つのグループに分けられました。
一方は銃の持ち玉が多いグループに、他方は持ち玉が少ないグループに分けられました。

当然、トータルの成績が良かったのは持ち玉が多いグループでしたが、
一発あたりの精度がよかったのは持ち玉が少ないグループでした。

時間が限られている。資源が限られている。
リソースが限られているという状況は人の集中を促します。

先ほどのトンネリングも合わせて考えると、
時間の足りなさは目標への集中と効率を促し、目標とは直接関係ないことの見落としを招きます。


時間がないことでトレードオフ思考が促される


あなたに2時間の余暇時間があるとします。
目の前には以前から見たかった映画のDVDが2枚。
どちらも所要時間は2時間かかります。

このときあなたはどちらの映画を観るか選択することになります。当然、他方の映画はあきらめることになります。

「何かを得るために何かを捨てないといけない」
と考え取捨選択することをトレードオフ思考と言います。

トレードオフ思考は常にその人にあるわけではありません。
人は状況によってトレードオフ思考になったりならなかったりします。

そしてどのような状況でトレードオフ思考になるかと言うと、
リソースが不足したときになります。

時間がなくなると、同じ選択でもトレードオフ思考をしてしまうことがあります。

時間があるときはメインも食べてデザートも食べようとなりますが、
時間がなければメインを食べる代わりにデザートは我慢しようとなります。

「自分が今トレードオフ思考になっている」と自覚することは、
冷静な判断を行う上での助けになります。







【参考文献】
センディル・ムッライナタン、エルダー・シャフィール「いつも『時間がない』あなたに」早川書房、2015年