人間は「中の上」が好きな動物です。
平均よりちょっと上だと人は安心します。
口ではネガティブなことを言っている人でも、
根底は平均よりちょっと上な自分を意識していたりします。
人は無意識に自分は平均より少し上くらいだと思ってしまう傾向があります。
「自分の容姿は平均かちょっとマシなほう」
「世の中全体を見れば自分はマシな仕事についている」
「自分の家族関係は良好なほうだ」
「自分が大きな病気になるイメージがわかない」
「同級生より自分が先に死ぬなんて考えたことがない」
「夫(妻)とは長く連れ添うと思う」
「平均寿命か、それよりちょっと長いくらい自分は生きると思う」
「あの人達より、自分は周りが見えて冷静な方だと思う」
「自分は特別な人間だ」と思っている人は少ないかもしれません。
でも、人は誰しも「平均よりちょっと上」というささやかな特別さを無意識に持っているものです。
この無意識に「平均より少し上」の感覚を持つことを、
心理学では「ポジティブバイアス(前向きな先入観)」と言います。
海外での小説にちなんで
「レイク・ウォービゴン効果」とも言います。
いずれにせよ、
人は根拠なく自分を過大評価しがちだということです。
生きていく上でなんでも客観的な数値にこだわる必要はありません。
また必要以上にネガティブになることもありません。
人は見たいものを見て、信じたいものを信じる動物です。
その都合の良さに救われる場合だってあるのです。
ポジティブバイアスは私達を生きやすくしてくれます。
そう考えると私達に「平均よりちょっと上」の感覚が備わっていることのは大切な資質です。
とは言ってもポジティブバイアスはあくまで先入観。
物事を客観的に冷静に見るときは注意しないといけません。
例えばギャンブル。
ギャンブルは常に胴元が儲かるような仕組みになっています。
大多数の人が損するのです。
根拠もなく、「自分はちょっと儲けられるかも」と考えてはいけません。
ギャンブルをすれば、あなたも損をする大多数の一人なのです。
例えば健康。
あなたがいま健康なのは、
あなたが平均より身体が丈夫だからじゃないかもしれません。
しかるべき年齢になれば周りが患っている症状と似た健康状態になるかもしれません。
あなたがある分野において平均の上か下か。
それはわかりません。
しかし「人は自分を過大評価しがち」という傾向は多くの人に当てはまります。
物事を達成するためには過大評価はほどほどに地道な努力を重ねることは大切です。
時として「自分は特別じゃない」と考えることは大切です。
ポジティブバイアスは自分に自信を持たせてくれると同時に、
自覚することで努力を怠らない自分を促してくれるでしょう。
【参考文献】
ダン・アリエリー『予想どおりに不合理』早川書房、2013年