「やさしさ」って、どういうこと? のレビュー~あらすじと解説



「やさしさ」って、どういうこと? のレビュー

アルボムッレ・スマナサーラ氏の、
「やさしさ」って、どういうこと?
を読みました。

個人的には、ある程度は考え方の参考になったなあと思いました。

こういった類の本は科学的な根拠があるわけではないので、読み手を選ぶ本ですね。

ものすごく共感する人はするし、しない人はしない。どちらも間違ってはいない。

そういった本です。



あらすじや概要

「『やさしさ』って、どういうこと?」は文字通り「やさしさ」について考える本です。

「やさしい」という概念を仏教をもとに考えます。



解説

「やさしい」と「エゴ」

意味があいまいな言葉は人が好き勝手に意味を取ってしまうことがあります。

なのできちんと定義されていない言葉を言ったり言われたりするときは注意したほうがいいです。

「やさしい」という言葉も意味があいまいです。

世間一般では、「やさしい」ということは良いことのように感じます。

けれど、人によっては、「やさしい」ということが「エゴ」であったりします。

自分が欲しい物を買ってくれるからやさしい。
自分の言った通りにやってくれるからやさしい。

そうやって、自分の思う通りになることを、「やさしい」と表現する人がいます。

そして、自分のエゴでやさしい人を決めると、「やさしくない人」を批判しはじめます。

結局のところ、世間の言う「やさしさ」は誰かの「エゴ」であったりします。

自分に都合が良ければやさしくて、
都合が悪ければやさしくない。

そんなふうに考えてしまっています。

そして、

多くの人が自分が求めるやさしさが自分のエゴであることに気付いていません。


「やさしさ」とは?

やさしさとは、
「自分が生きるために必要な刺激をもらうこと」です。

ここでいう刺激とは、

「ただいま」と家に帰ってくると家族が「おかえり」と言ってくれることであったり、

たまたま手が空いていたから人が自分を手伝ってくれたり、

そういう自然なことです。


生命は成り立っています。

生命は「生かされている」わけではありません。

なぜなら生命はどれも対等だからです。

生命は相互に助け合い、成り立っています。

そのネットワークの中で自然にいることがやさしさなのです。

相手が「ただいま」と言ったから「おかえり」と言ってあげる。

自分の手が空いていて、力になれそうだから相手を手伝ってあげる。

無理をせず、他者とのつながりの中で自然に助け合う。

それがやさしさです。


「エゴ」ではない「やさしさ」

美容師は髪を切ることができます。
だから他者の髪を切るということで誰かを支えることがでいます。

医者は病気を診ることができます。
だから他者の病気を観るということで誰かを支えることができます。

美容師は病気を観ることはできません。
医者は髪を切ることはできません。

どっちがいいという話ではありません。

それを上手にできる人がさっとやってあげる。

自分にできることを自然にすることがやさしさでもあるのです。

そうやって、私達は人とつながりネットワークを築いているのです。

美容師さんに髪を切ってほしい。

これは自然なことです。

でも、医者に髪を切ってもらうように頼むのは筋が違いますね。

それはエゴです。

「美容師さんに髪を切ってほしい」は自然なことです。

自分の求めることがエゴではなくて、自然な希望なんだと認めることが、エゴでないやさしさに触れる第一歩です。

エゴではなやさしさをもつには、

自分が求めているものは「必要」なものなのか、「過剰に欲しい」ものなのかを知ることが大切です。

人は生きるためには食べ物が「必要」ですが、残したり過剰に豪華な食べ物は「欲しい」だけです。

自分の「欲しい」ではなく「必要」を見つめることで、エゴではないやさしさのヒントになります。


「やさしさ」の4つの段階

やさしさには4つの段階があります。

まずは「慈」の段階。
お互いを助け合い、支え合う段階です。

次が「悲」の段階。
苦しんでいる人を助けてあげたいという段階です。

次が「喜」の段階。
「よかったなあ」と人の幸福を喜べる段階です。

最後が「捨」の段階
「慈」の人も「悲」の人も「喜」人も、全ての生命は平等なんだと広い視野を持てる段階です。



おわりに

「『やさしさ』って、どういうこと?」は本としてはページ数も多くなくて読みやすい本です。

何か知識が書いてあるというよりは、

「こういう考え方もあるんだなあ」というように自分の価値観を広げるきっかけになる本です。

なので興味がある人は読めばいいし、読んでもこれに書いてあることが絶対的に唯一の真実だというわけでもないでしょう。


「やさしさ」って個人的には人生に欠かせないものの1つだと思うのですが、やっぱりそういう概念っていざ改めて考えると難しいものです。

「エゴ」ではない「やさしさ」のヒントに、役立つ本です。



その他の記事

マルク・レビンソン氏の「コンテナ物語」を読みました。 学んだことや役に立ちそうなことをまとめます。 抜粋ではなくあくまで学んだこ...
書籍、「孤独の科学」から学んだことをまとめます。 抜粋ではなくあくまで学んだことを個人的にまとめたノート感覚なので、その点はご了承ください...
ダニエル・S・ハマーメッシュ氏の、「美貌格差 生まれつき不平等の経済学」から学んだことをまとめます。 抜粋ではなくあくまで学んだことを...
ダン・アリエリー氏の「予想どおりに不合理」を読みました。 学んだことや役に立ちそうなことをまとめます。 抜粋ではなくあくまで学んだこ...
「サピエンス全史」を、「読んでもわからなかった人」「途中でやめた人」「まだ読んでない人」向けにものすごく端折って解説します。 【目...



参考資料

アルボムッレ・スマナサーラ『「やさしさ」って、どういうこと?』宝島社、2007年

テキストのコピーはできません。