学校の授業や仕事場でパソコンやタブレットなどデジタル機器を導入している現場が増えてきましたね。
昔は紙に鉛筆でノートをとることが当たり前でしたが、今ではパソコンで文字を打つ機会のほうが多い。
手書きでノートをとることと、パソコンでタイピングしてノートをとることはどちらが効率的なのでしょう?
プリンストン大学の心理学者、パム・ミューラー氏とカリフォルニア大学の心理学者ダニエル・オッペンハイマー氏らの研究で興味深いものがあります。
彼らは学生達に簡単なスピーチを聞いてもらいます。
その際に手書きでノートをとるグループとパソコンでタイピングをしてノートをとるグループに分けました。
スピーチ終了30分後、学生達にテストを実施しました。
結果、スピーチの事実に基づく問題については手書きのグループもパソコンのグループも点数は同じでした。
一方で、スピーチのコンセプトなど抽象的な問題に関しては手書きのグループが高得点でした。
ノートを手書きでとったグループのほうが「自分の頭で考える問題」に強かったのです。
パム氏はその後、様々なパターンで再実験を行いました。
まず1つ目は、対象者に意識してノートをとってもらうパターン。
「自分の頭で考えながら自分の言葉で書くように」といった念押しを行った上で、実験を再び行いました。
これでパソコンのグループも意識してノートをとってくれそうです。
しかしながら結果は同じでした。
事実問題は点数が差がつかず、抽象的な問題では手書きに劣る。
続いて2つ目のパターンで実験。
今度はテストを数日後に設定。テスト直前には再度自分のノートを使って勉強してもらいました。
この場合、正確に記録しているパソコンのほうが有利な印象です。
しかしながら結果は同じでした。
事実問題は点数が差がつかず、抽象的な問題では手書きに劣る。
このように、同じ勉強量だとパソコンよりも手書きのほうが点数が高くなります。
手書きの方がパソコンよりも授業内容をよく思い出せたのです。
様々な条件下でも手書きのほうが効率的に学習できていました。
なぜでしょう?
やはり手書きでノートをとる行為は自然と自分の頭で考えたり、講師の話を理解しながら聞きます。一方でパソコンだとどうしても機械的に文字を打つ作業になってしまいがち。
限られた時間で効率的に物事を理解し自分の頭に落とし込みたい場合、
手書きでノートをとることが最も効率的であることがわかります。
ではパソコンで文字を打つことはまったく不要なのでしょうか?
やはり物事にはバランスが大切で、物は使いようでしょう。
パソコンをはじめとして、デジタルな記録はあとで再編集するときは手書きよりも便利です。
まずは手書きでノートやメモはとり、本当に必要なものはあとでデジタル化するという方法が最も理に叶っているのではないでしょうか?
手書きの文書をパソコンで打ち直すだけでなく、最近はノートを写真に撮ることでデータ管理できるアプリなどもあるのでそれらを活用してもいいでしょう。
パソコンで文字を打つよりも、手書きでノートをとるほうが人はよく記憶できます。
しかし何でも何度も手書きというわけではないでしょう。
はじめは手書きでノートをとり、本当に必要なものだけあとからデジタル化する。
アナログとデジタルはお互いに長所と短所があるので使い分けが必要です。
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【参考文献】
ケビン・クルーズ『1440分の使い方』パンローリング株式会社、2017年