スタバはなぜサイズがS・M・Lじゃないのか?

日本にもいたるところにあるスターバックス
あまり行ったことがない人だとまず戸惑うのがドリンクのサイズかと思います。

通常、飲食店のほとんどはドリンクのサイズがS・M・L。
言わずもがなスモール・ミディアム・ラージですね。

しかしスタバの場合は小さい順に
ショート・トール・グランデ・ベンティとなっています。

ちなみに容量としては
・ショート 240ml
・トール 350ml
・グランデ 470ml
・ベンティ 590ml

です。


S・M・Lじゃない理由


サイズの表記のうち、グランデとベンティはイタリア語です。
当時の社長がスタバを作るとき、イタリア式のコーヒーの淹れ方に感銘を受けたのがきっかけです。

そのためスタバのドリンクのサイズはイタリア語が混合した独自の表記になっているのです。


スタバの心理学


スタバがドリンクのサイズをS・M・Lではなく、
ショート・トール・グランデ・ベンティにしたことで、
創業者に意図があったかは別として心理学的に大きなメリットがあったと言われています。

ポイントとなるのはアンカリングという概念です。


アンカリング


私達は物事判断する際に何らかの基準を用います。
「普通は○○だな」といった具合です。

しかしこの基準というものを人間は意外と適当に決めています。
その一つがアンカリング。

アンカリングは、
ひな鳥が最初に見たものを親と思いこむ心理と類似したものです。

私達は最初に経験したものを無意識のうちにそのジャンルの基準にしてしまいます。
この傾向をアンカリングと言います。

例えば初めて勤めた会社がサービス残業毎日4時間のブラック企業だと、
転職した会社がサービス残業毎日1時間がすごく幸せに感じます。
本来、サービス残業は法律的にはいけないことなのにです。

昔、初めて買ったパソコンが30万円したものだと、
20万円で買った新しいパソコンは以前のものより安くて性能が良い気がします。
10万円でも上手に買い物すればそこそこのパソコンを買えるのにです。

このように、人はその物事が実際のところ、客観的なところどうかは置いておいて、自分が過去にした経験をもとに良し悪しを判断しがちなのです。


アンカリングから学べること


アンカリングの心理から学ぶ教訓は2つです。

ひとつは最初が肝心であるということ。
なぜならそれがあなたの基準になるから。

はじめて付き合った恋人が素敵な人なら、あなたの恋愛のハードルは上がります。
逆にしょうもない人だったら、あならの恋愛の許容範囲は広がります。

あなたが物事を判断する基準は、初めのものにかなり左右されるのです。

もう一つの教訓は、アンカリングを修正するのはなかなかたいへんだということ

例えばあなたが初めて住んだ家がオートロック付きの高級マンションだったとしたら、
6畳一間、築30年のアパートに住むことはなかなか受け入れがたいかもしれません。

人は一度上がった価値観や生活レベルを下げるのが難しいです。
人は一度できた基準を壊すことが難しいです。



スタバとアンカリング


アンカリングは一度できるとこれを修正することはなかなか難しいと書きました。

スタバのドリンクは正直割高です。

では、何を基準に割高なのでしょう?
一般の飲食店のS・M・Lのドリンクと比べて割高なのです。

しかしスタバに詳しくない人のほとんどは、
普通のMサイズがスタバのどのサイズに該当するかピンときません。

だからドリンク100mlあたりの値段がどのくらい違うのか比べにくい。

スタバはサイズをS・M・Lの表記にしないことで、
通常よりドリンクを他店と比較しにくくしているのです。

S・M・Lという既存の基準に沿うのではなく、
ショート・トール・グランデ・ベンティという新たな基準を消費者にアンカリングしているのです。

この新たな基準を作るという行為は、
消費者に「これはこういうものだ」という妙な納得を与えるのに役立ちます。

「これはこういうものだ」という感覚により、消費者は高いものでも買うことのハードルが下がります。

トヨタがトヨタで高級車を作らず、
あえて「レクサス」というブランドを立ちあげたのも同じ理由かもしれません。






【参考文献】
ダン・アリエリー『予想どおりに不合理』早川書房、2013年