人類の進化の革命
人類の歴史には3つの重要な革命がありました。
「認知革命」「農業革命」「科学革命」です。
これらが人類の繁栄に大きな影響を及ぼしました。
「認知革命」は大きな社会を作れるようになった、偶然とも言える脳の使い方の発達。
「農業革命」とは小麦の栽培など。
「科学革命」とは文字通り科学技術の発展。
人類の歴史の中で比較的最近起こったこの3つの革命が、地球上での人類の存在感を強めることにつながりました。
人類が繁栄した理由
私達がなぜこれほどまでに地球上で力を持ったのか?
私達がなぜこれほどまでに地球上で力を持ったのか?
よく言われるのは「火を使うことができた」とか「手が自由で、道具を作ることができた」とか「脳が大きくて頭がよかった」などですね。
しかしながら「火を使うこと」も「道具を作ること」も、他の人類種もできました。
「脳が大きくて頭がよかった」に関しても、もっと優れていた人類種もいました。
では、なぜそのような生存競争の中で私達人類である「ホモ・サピエンス」の種が生き残ったのか?
それは何かの拍子に偶然起こった「認知革命」であると言われています。
認知革命とは?
人の脳は体重の2~3%。
一方で消費エネルギーは全体25%を占めます。
脳の大きさは従来とあまり変わらないのに、何かの拍子にその使い方が変化しました。
私達「ホモ・サピエンス」が他の人類と異なったのが、「みんな」とか「私達」といった抽象的な思考がより広い範囲でできることです。
霊長類は主に集団で生活します。
集団の規模とその種の脳(新皮質)のサイズは比例することがわかっています。
人間の場合、形成できる集団はおよそ150人規模と言われています。
しかしながら、私達はもっと大きい集団で生活をしていますね。
例えば200人以上の規模のある会社や学校。
日本人が外国人より「日本人」に親近感を持つのもそれでしょう。
私達は、「私達」という抽象的なつながりを意識することができます。
そのため、
より大きな集団で物事に取り組んだりそのための作戦・計画を立てることができます。
これらが「ホモ・サピエンス」が力をつけていった背景だと言われています。
農耕生活を選んだ人類
「ホモ・サピエンス」と他の人類
10万年前の地球には、少なくとも6種のヒトの種が存在していました。
これは珍しいことではなくて、1種しかいない今の方が特異であり、そのように他の人類を追いやった我々「ホモ・サピエンス」はある意味で残酷な存在なのかもしれません。
私達「ホモ・サピエンス」は他の絶滅した人類と共通点が多々あります。
例えば火を使うこと。
火を通したり調理をすることで食べ物の消化時間はぐっと短くなります。
チンパンジーは1日5時間食物を噛んで消化しているのに対し、人間は食事に1時間もかければ充分になりました。
人類はそれぞれの種がわずかながら交配も可能でした。
そのため我々「ホモ・サピエンス」にはわずかながら「ホモ・ネアンデルタール」あるいは「ホモ・デニソワ」などのDNAが含まれているそうです。
小麦に家畜化された人類
狩猟採集民は農耕民よりも飢えたり栄養不良になることが少なかったそうです。
また、一般に背も高くて健康だったとか。
狩猟採生活は子供の死亡率こそ高かったものの、45歳の女性の平均余命は20年で、生まれてから最初の数年を生き延びればその後は長生きする可能性がたっぷりありました。
農耕社会は人類全体の個体数を増加させることはできましたが、個々人の日々の生活の満足度をあげたかと言えば微妙だったのかもしれません。
農耕のために日々の労働時間は長くなり、
小麦という単一の食物の摂取が増えたので栄養状態も悪くなりました。
このように考えると、
私達が小麦を栽培化したのではなく、
私達が小麦に家畜化されたのかもしれません。
まとめ
人はある贅沢品に慣れてしまうとそれを当たり前に思ってしまいます。
私達は進化の中でその個体数を増やすことに成功しました。
しかしながら、労働時間は長くなり、毎日の生活はある意味で大昔よりも過酷なものとなりました。
一方で、こういった社会を作ったために確かに救われた命もあります。
進化上の全体としての成功と、個々の苦しみには乖離があります。
何が正しくて何が間違っているのか。
たぶん人はそれも探り探りで進化してきたのでしょう。
その他の記事
参考資料
ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史(上)』出版社、2016年