なぜ人は人に親切にするのでしょう?
人はなぜ、助け合うのか?
人が他者に親切にすることは良いこととされますね。
なぜでしょう?
子供の頃、道徳的に親切にすること・協力し合うことの大切さは誰もが教えられますね。
しかし別の見方もあります。
人が親切にすること・協力し合うことの背景には、そうすることでより確実に生き延びてこれたという進化の歴史があります。
以下、人が協力し合うことの根拠を、進化学的な見地から考えていきます。
人が他者や社会に協力する理由
進化生物学者のマーティン・ノヴァク氏は、人が他者や社会に協力する理由を5つ挙げています。
血縁淘汰
「兄弟を2人、あるいはいとこを8人助けるためなら私は川に飛び込む」
兄弟は自分と遺伝子が50%一緒です。
いとこなら12.5%一緒です。
ですので上記の人数なら自分が命を犠牲にしてもいいと思えるという説です。
直接的相互主義
「私に協力してくれるなら、私もあなたに協力する」
ギブ&テイクの関係ですね。
間接的相互主義
「あの人に協力することで、私の周囲からの評価が高まる。結果私自身も報われる」
間接的なギブ&テイクです。
ネットワーク互恵主義
「私があなたを助けることで、互いを助け合うこの心地よいネットワークの中に居続けることができる」
一匹狼になることを避けるわけです。人間は社会的な動物ですね。
集団淘汰
「協力し合っている人の方がそうでない人より人生はうまくいっている気がする」
先述のネットワーク互恵主義と似ていますがやや異なります。
ネットワーク互恵主義が「集団からはずれることを避けたい」のに対し、集団淘汰は「協力し合うこと自体が戦略としていい」のではという考えに基づきます。
「社会的つながり」と「孤独」
人は1歳3カ月頃からすでに他者を手伝うような様子が見られると言います。
その協力に対しての見返りがなくてもです。
たとえ直接的な見返りがなくても、
人と協力することによって、社会的なつながりができることは自分を助けます。
チンパンジーは人間に似てはいますが、人間ほどのコミュニティーを作ることが難しいです。
そんなチンパンジーのオスは群れの中のトップに立つと激しいストレスやプレッシャーに襲われ体調を崩すことが少なくないそうです。
一説ではチンパンジーのオスは大人になる頃にはメスの半分の数しかいないのだとか。
「頂点に立つ者は孤独である」なんて言ったりしますね。
人間ほど社会的つながりが成熟していないチンパンジーは孤独感を感じることも多いのでしょう。
まとめ
人を助けるのにあまり打算的な考えはよくないですね。
一方でこのように見ることで「単なるお人好し」と「社会性を持って人と助け合うこと」の違いがなんとなくわかる気がします。
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参考資料
ジョン・T・カシオポ、ウィリアム・パトリック『孤独の科学』河出書房新社、2011年