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ケンとチャコの関係性
クレヨンしんちゃん映画の中でも歴代最高傑作との呼び声も高い、「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」
本作における敵であり、組織「イエスタデイ・ワンスモア」のリーダーであるケンとチャコ。
ケンとチャコは恋人同士ですが、結婚はしていません。
一見すると歳が離れている2人が、どのように出会い、夫婦でも他人でもなく「恋人」という関係性のまま「イエスタデイ・ワンスモア」を立ち上げるに至ったのか作中で具体的に語られることはありません。
しかしながら、彼らの言動はどこか意味深です。
作中ではっきり語られない、意味深でどこか悲しげなケンとチャコの言動は、「郷愁」という本作のテーマをまさに体現していますね。
以下、今日は「オトナ帝国の逆襲」におけるケンとチャコの解説です。
「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」とは?
作品の位置づけ
古き良き昭和の世界観を取り戻そうと大人達を操る組織「イエスタデイ・ワンスモア」。
その代償として未来が奪われてしまうかもと、しんちゃん達「カスカベ防衛隊」および野原一家は「イエスタデイ・ワンスモア」のリーダーであるケンのところへ乗り込む。
というお話。
2001年に公開され、制作当時は賛否両論あったものの、
「大人も感動するクレヨンしんちゃんの映画」として高い評価を受けることになります。
2005年の「ALWAYS 三丁目の夕日」をはじめとして、
2000年代は「昔ってよかったよね」というノスタルジーを肯定する風潮があった中、
「オトナ帝国の逆襲」は「過去を懐かしむ」気持ちを認めつつ、それでも「未来」の大切さに重きを置いたメッセージ性の強い作品でもあります。
そして、「オトナ帝国の逆襲」が評価された要因として、敵キャラの魅力、つまりケンとチャコの魅力も外せないでしょう。
ケン
「イエスタデイ・ワンスモア」のリーダー。
「懐かしい匂い」を作りだし、世界を懐かしさの虜にしようとします。
敵ではありますが、野原一家をあえて逃がし、未来をかけて正々堂々戦うフェアな悪役でもあります。
懐かしさから目覚めた野原一家と話をする場面を設けたり、
懐かしい匂いがなくなった町の住人を責めず、解放しその後の行動は個々の判断に任せたりする様子からも彼の理性的な面がうかがえます。
野原一家が奮闘する様子をあえて懐かしい町の住人達に見せて、結果としてそれが自身の敗北につながります。
自分一人が「懐かしい過去」に戻りたいというよりは、
「みんなが望んでいるから」「懐かしい過去」を取り戻すという代弁者的な姿勢が見えます。
チャコ
ケンの恋人。
ケンと異なり、
自分自身が「懐かしい過去」を求めている側面が強く、それゆえに感情的になったり目的達成を最優先に考える言動が目立ちます。
また、野原一家により作戦が失敗した際は自ら命を絶つ選択をするなど、かなり「懐かしい過去」に入れ込んでいる様子です。
ケンとチャコの仮説
ケンとチャコがどのように出会い、夫婦でも他人でもなく「恋人」という関係性のまま「イエスタデイ・ワンスモア」を立ち上げるに至ったのか作中で具体的に語られることはありません。
それゆえにファンの間ではいろいろな仮説が飛び交っていますが、いずれも確証はありません。
以下、主な仮説をとりあげます。
昭和を再現している説
作中、みさえが「ご夫婦?」と聞いたのに対してケンは「いや」と否定しています。
そして部屋の様子を見て、ひろしは「同棲時代みたいだ」と感想を言います。
昭和の古き良き時代に恋人と同棲して夢を見ながら日々を過ごしていた若い頃。まさにノスタルジーですね。
「イエスタデイ・ワンスモア」が作った夕暮れの商店街は、その雰囲気から懐かしい匂いを発し人々を魅了します。
ケンとチャコもその町で匂いを作りだす一端を担うために、ノスタルジーなキャラクターを演じていたという説です。
不倫している説
ケンとチャコの外見の年齢差から、ケンとチャコが結ばれることのない不倫関係にあるという仮説をちらほら散見します。
終盤に自殺しようとするケンとチャコがしんちゃんの声によって止められ、「また家族に邪魔された」とケンが言うシーンがあります。
これは本編だけで見ると、
1回目は世界を懐かしさで洗脳しようとする計画を家族(野原一家)に邪魔され、
2回目は自分達の自殺を邪魔されたと捉えるのが普通ですが、
これに加えて
「ケンとチャコが不倫関係である説」も背景にすると、
1回目はケンの家族の存在によってチャコと結ばれず、
2回目は世界を懐かしさで洗脳しようとする計画を家族(野原一家)に邪魔される
という「また家族に邪魔された」という言葉がダブルミーニング(2つの意味を持つ)になるわけですね。
チャコが不妊である説
チャコが不妊症であり、子供を作ることができず、ゆえに2人は恋人ですが結婚には至らなかったとする説です。
家族である野原一家に対して感情的な場面が目立つチャコの言動を説明できるのがこの仮説です。
まとめ
以上のようにいろいろ仮説はありますが、いずれも確証はありません。
しかしながら、この何かを背負ったような、けれどその何かがはっきりしないケンとチャコが、ノスタルジーを取り扱った「オトナ帝国」の雰囲気に非常にマッチしていますね。
2人の関係性は「視聴者のそれぞれの推測にゆだねる」といった少し謎を残した状態が、ある意味で「オトナ帝国」の楽しみ方でもあります。
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