オトナ帝国の逆襲が名作である理由の解説・考察|クレヨンしんちゃん映画



オトナ帝国の逆襲が名作である理由

「映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」(Abema TV)より引用

 オトナ帝国の逆襲が名作である理由の1つは、その世界観の巧みさだと思います。

 クレヨンしんちゃん映画において名作の1つとされることが多い「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」。

 「ヒロシの回想シーン」や「タワーを駆け上がるしんちゃん」、どこか切ない雰囲気のケン&チャコなど魅力的なシーンは非常に多いです。

 そしてこれらのシーンがクローズアップされがちですが、オトナ帝国はその世界観自体が非常に巧みであると考えます。



解説

子供に戻る大人達

「映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」(Abema TV)より引用

「映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」(Abema TV)より引用

 オトナ帝国では大人達が懐かしさの中で子供に戻り、しんちゃん達子供と敵対します。
 子供に戻った大人達は、おもちゃの銃や剣で子供達を追い詰めます。

 大人が子供に戻るという設定により、本来は残虐になる「大人達が子供達を攻撃する」というシーンを子供向けに耐えうるマイルドなものにしています。

 また、大人が子供に戻ることで、ただの子供達であるしんちゃんが活躍できる土台を作っています。

 クレヨンしんちゃんの映画シリーズは、非日常な事態に対してしんちゃん達が活躍する構成をとります。
 このとき、一般人である野原一家やカスカベ防衛隊をいかに自然に活躍させるかがポイントになります。

 このための演出は大きく2つあります。

 1つはハイグレ魔王やヘンダーランドのような、SFテクノロジーや魔法を駆使してしんちゃん達が強くなるパターンです。

 そしてもう1つは、ブリブリ王国やブタのヒヅメにあるような、強い周りの登場人物に支えられながら部分的に活躍するパターンです。

 ほとんどのクレしん映画はこのどちらかに該当するのですが、

 オトナ帝国は「大人が子供に戻る」ということにより周りがしんちゃん達のレベルに合わせて弱くなるという稀有な設定をとっています。

 これにより先述のような残酷なシーンを自然に回避しながら、「大人VS子供」の対等な戦いによる緊張感を演出することができています。


テーマの深遠さ

「映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」(Abema TV)より引用

 このような世界観により、子供が大人と対等に戦えるシチュエーションをオトナ帝国は作っています。

 しんちゃんに限らず、子供向けアニメは子供が見るわけですから、その際に「大人や世界と対等に戦える子供」というのは見ていて興奮するものです。

 そして後半は野原一家の奮闘に物語が移っていきます。

 オトナ帝国の逆襲は「大人VS子供」という構図から「過去VS未来」というテーマも表現しています。

 そしてこの「過去VS未来」という構図から、「後ろ髪を引かれる郷愁」と「かけがえのない今」という対比へとつながっていきます。

 ヒロシは回想シーンにて懐かしさを感じながらも、今の家族の大切さを再認識し涙を流します。

 戻りたいほど魅力的な懐かしさが自分の過去にある。
 しかしそうやって歩んだ自分の人生とその結果の「今」はかけがえのないものです。
 そのかけがえのなさを、家族や子供、友人を通して人は気づかされます。
 
 そういった演出が、子供だけでなく大人の心にも響くのではないでしょうか。



オトナ帝国の逆襲で大人が泣ける理由

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参考資料

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