クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦
「アッパレ!戦国大合戦」は、歴代のクレヨンしんちゃん映画の中でもナンバー2の傑作だと思います。
個人的にはクレヨンしんちゃん映画の歴代最高傑作はオトナ帝国だと思っていて、戦国大合戦はそれに次ぐ「大人も楽しめるクレヨンしんちゃん」と思っています。
この2作はギャグが少なめで感動を主体にした作品であり、基本はハッピーエンドなのですが視聴後は胸が痛くなる「切なさ」があるのが特徴です。
解説
シリアスな世界観
戦国大合戦の魅力の1つは、歴代のクレしん映画の中でも屈指のシリアスで緊張感のある世界観です。
弾丸飛び交う戦国時代に、車はあるもののほぼ丸腰でタイムスリップした野原一家。
しんちゃん達が死ぬような展開はないとわかっていながらも、本物の戦国武将達の戦いに巻き込まれるしんちゃん達に手に汗握ります。
クレヨンしんちゃん映画のほとんどは、しんちゃん達が悪の組織と同等に戦えるよう不思議な力を授かったり、あるいはその悪の組織自体がどこかふざけたネーミングや戦い方をします。
要するに他の作品は設定としては命を落としてもおかしくない世界観でありながら、どこかギャグ要素があって安心感があります。
しかしながら、戦国大合戦はそんな安心材料がないガチで危険な世界観です。
野原一家は戦国時代で戦える武器もなければ魔法による強化などもされていません。
相手は命のやりとりをすることが当たり前な本物の武士達。
脇役である野武士達との絡みですら、しんちゃん達が大丈夫か不安になるほどです。
又兵衛と廉姫
そんなシリアスな世界観の本作で、感動の中核を担うのはやはりゲストキャラクターの又兵衛と廉姫でしょう。
生きるか死ぬかの世界で生きる又兵衛と廉姫。
2人が無邪気な現代5歳児であるしんちゃんの言葉にハッとさせられることが度々あります。
これは大人が子供の言葉にハッとさせられることと似ていて、視聴者が考えさせられる深さがあります。
また戦国大合戦はクレしん映画にしては珍しく、完全なハッピーエンドではないけれどバッドエンドではない「苦く切ないハッピーエンド」を迎えます。
この切なさを終盤で廉がうまく言語化していて、視聴後の胸の苦しさを誘います。