人生は選択の連続です。
一見すると、選択肢というのは豊富なほうが好ましく思えます。
今日は選択における人間の心理について考えます。
海外で行われた「扉ゲーム」という実験があります。
パソコン画面上に赤・青・緑の扉が表示されています。
扉を開けると、つまり扉をクリックすると一定のポイントが加算されます。
※実際の実験ではポイントではなくお金で何セントという感じで行われました。通貨だとわかりにくいのでポイントで説明したいと思います。
各扉で得られるポイントはランダムです。
けれど各扉には出現するポイントの範囲が決まっています。
例えば赤は1~10点、青は3~12、緑は1~7といった具合です。
このポイント範囲を被験者は知りません。
被験者がクリックできるのは100回。
できるだけたくさんのポイントを稼いでもらいます。
条件として、
・扉を開けるのは1クリック。
・別の扉を選択する際も1クリック消費する。
つまり同じ扉を開け続ける分は、クリックするたびにポイントが多かれ少なかれ獲得できます。
しかし、別の扉に変える際はポイントにならないクリックを消費してしまうわけです。
「扉ゲーム」で最も多くポイントを稼ぐ方法は、
できるだけ少ないクリック数で、どの扉が一番高いポイントを高頻度に出してくれるか見極めること。
見極めたあとはその扉のみずっとクリックすること。
これに尽きます。
実際に実験現場では上記のような行動が被験者に多く見られました。
扉ゲームに新たに条件を加えます。
他の扉が連続12回クリックされたら、クリックされなかったほうの扉はなくなってしまう。
という条件です。
この条件により、
3つの扉をまんべんなくクリックしないと選べる扉が減っていってしまいます。
なくなった扉は二度と復活できません。
被験者には扉がなくなる12回という回数も伝えて実験を実施します。
ここで重要なのは、
扉が消えようが消えまいが、ポイントを多く稼ぐ方法は先ほどと変わらないということ。
少ないポイントしか出ない扉はさっさと諦めればいいのです。
結果はどうでしょう?
扉が消えるという条件をつけただけで、
多くの被験者が3つの扉を維持することに注意を払うようになりました。
「二兎を追う者は一兎をも得ず」という言葉があります。
人生では時として、選択肢を絞って力を注いだほうが結果うまくいくことが多々あります。
その一方で、扉ゲームからわかるように、
人はとりあえず選択肢をたくさん準備しておこうと考えがちです。
それが結果に結び付かないとしても。
何かを選ぶということは、何かを捨てるということと関連します。
仕事で残業をすれば、家族との時間は減ってしまいます。
週に1回習い事をしていたら、新しい習い事は残りの曜日に組まないといけません。
夜遅くまでお酒を飲んでいたら、寝過ごしてしまい次の日の朝の時間は犠牲になるかもしれません。
自分の本当の目的を見極め、
それに関係のない選択肢は捨てる勇気を持ちましょう。
選択する機会も、選択したものに取り組む時間も、人生には限りがあるのですから。
【参考文献】
ダン・アリエリー『予想どおりに不合理』早川書房、2013年