「鋼の錬金術師」OVA「盲目の錬金術師」
生きていると言えるのかどうかはわからない。
もうずっとロザリーはこのままよ。
でも、この体の中にいるのが本当にロザリーかどうかは、誰にもわからない。
もしかすると、彼女ではない何かがいるのかもしれない「OVA 鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST #01 盲目の錬金術師」(Abema TV)より引用
なかなか衝撃的な映像と後味の悪い結末が印象的な「盲目の錬金術師」。
「盲目の錬金術師」はアニメ「鋼の錬金術師」2期のOVAです。
20分前後の短いストーリーですが、内容は重く教訓めいていて名作です。
作中、人体練成の末に生まれたロザリーが現れますが、このロザリーの中に本物のロザリーの魂はないと考えられます。
以下、これらの解説です。
ロザリーとエミ
詳しいあらすじは以下をご参照。
秘密の部屋にアルを案内するロザリー。
部屋の中には人体練成によって生まれたロザリーと思しきもの。
アルを部屋に案内してくれたのは、本物のロザリーが亡くなったあとにロザリーを演じている孤児のエミだったわけです。
人体練成で死んだ人間を生き返らせることは可能なのか?
アニメ「鋼の錬金術師」2期のストーリー全体から考えると、
「鋼の錬金術師」の世界観において
人体練成をもってしても死んだ人間を生き返らせることはできません。
怪我を治す医療用錬金術と異なり、
そもそも失われてしまった体や魂を錬金術によって元に戻すことはできません。
だからこそオートメイル技術があるわけです。
ここでわかりにくい点が、
エドはアルの魂を鎧に定着させました。
物語の最後にはエドは腕を取り戻しましたしアルは体を取り戻しました。
一見すると矛盾しているように思えますね。
ここでの違いは、
失ったものが本当に失われたのか、それとも(人体練成の代償などで)真理の扉に「持っていかれた」だけなのかということです。
取り戻したいものが「持っていかれたもの」、つまり真理の扉の向こうにあるものであれば、代価を払ったり賢者の石を使うことで取り戻すことが可能です。
一方で、一度死んでしまった人の命や魂は錬金術をもってしても取り戻すことは不可能です。
まとめ
アル「生きてるの?」
ロザリー「生きていると言えるのかどうかはわからない。
もうずっとロザリーはこのままよ。
でも、この体の中にいるのが本当にロザリーかどうかは、誰にもわからない。
もしかすると、彼女ではない何かがいるのかもしれない」アル「本物、だよ」
ロザリー「うん。だから、ここにいるのが本物のロザリーだから、私は、この家の本当の子供にはなれないの」
アル「エミ・・・」
ロザリー「でもエミに戻ったら、また孤児院の暗い片隅で、木の棒竹をおもちゃに過ごさなきゃならならない」
「OVA 鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST #01 盲目の錬金術師」(Abema TV)より引用
以上のように、一度失われてしまった魂を元に戻すことは人体練成をもってしても、代価により術者の体の一部を持っていかれたとしても不可能です。
ゆえに人体練成によって生まれたのは「ロザリーのようなもの」であり、本物ではありません。
そのかすかな動きを生み出しているのは、ロザリーの魂ではなくエミの言う通り「彼女ではない何か」なのです。
ではなぜアルは「本物、だよ」とエミに共感する姿勢を見せたのか?
ここに「盲目の錬金術師」のストーリーの深みがあります。
主人のために、幼くして亡くなったロザリーのために、自分の目を失ってまで人体練成を試みたジュドウ。
そんなジュドウに対し、「人体練成は失敗した」と言うことができなかった主人と奥方。
彼らは人体練成によって生まれた「ロザリーのようなもの」を本物として扱うしかないわけです。
もしもそれを「ロザリーではない」と認めてしまえば、ジュドウのやったことはまったくの無駄であったと認めることになるからです。
このような人間の葛藤が「盲目の錬金術師」では描かれていますね。
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