アニメ「鋼の錬金術師」について一部ネタバレも含みますのでご了承ください。
ホーエンハイムの1期と2期の違い
鋼の錬金術師において物語の根幹に関わりながら、1期と2期で最も違う描かれ方をする人物がホーエンハイムと言えます。
アニメオリジナル展開の1期では賢者の石を使って延命してきた浮気性の「ダメ男」として描かれます。
原作準拠の2期では、人とのつながりを重んじる家族想いの「良い父親」として描かれます。
解説
設定の違い
ホーエンハイムの命は賢者の石と深く関りがあるという設定は、1期も2期も同様です。
ただしその過程が1期と2期では異なります。
1期では自分の命を延命するため、賢者の石を使って他人の身体に自分の魂を移し替えます。
つまり自発的に(葛藤はあるものの)人の命を犠牲にしています。
2期ではフラスコの中の小人ホムンクルスに騙され、ホムンクルスが身体を手に入れる過程で自身も賢者の石を内包する存在となってしまいます。
ホムンクルスに利用された結果であるため、ホーエンハイムはそのことで深く苦しみます。
また、1期では「ホーエンハイム・エルリック」、2期では「ヴァン・ホーエンハイム」とフルネームも異なります。
つまり2期では「エルリック」という姓は母方、トリシャの姓となっています。
本編での活躍や出番の違い
鋼の錬金術師という物語は、ホーエンハイムが始まりの人物であると言っても過言ではありません。
そのためホーエンハイムは「鋼の錬金術師」のもう一人の主人公と言えます。
ただしその人物像が、1期と2期ではかなり違った描かれ方をします。
1期のホーエンハイムはダンテという妻と賢者の石を使って延命をしながらも、姿を消してしまいます。
そしてトリシャと結ばれ、トリシャのことを「唯一愛した女性」と都合よく言います。
かと思えば道中であったロスを口説くなど、浮気性のダメ男な言動が目立ちます。
トリシャやエドとアルをおいて旅立ったのも、(魂の定着の繰り返しにより)腐った身体を見られたくなかったという結局は目の前の問題からの逃避でした。
雰囲気自体は落ち着いており、それゆえに言葉もそれっぽく聞こえるものの、1期のホーエンハイムは言動に矛盾が多く、中身がないというか基本は都合の悪いことから逃げ出す気質がうかがえます。
一方で、2期のホーエンハイムはホムンクルスに利用され賢者の石になった自分に苦しみながら、その魂を救うことに尽力します。
本来は家族想いなホーエンハイムですが、「大切な人と一緒に歳をとること」や「ホムンクルスの企みを阻止する」ため、断腸の思いで家族を置いて旅に出ます。
結末の違い
1期も2期も、ホーエンハイムは最終的に命を落とします。
1期ではエドを異世界から元の錬金術の世界に帰すため、自身の命を犠牲にして門を開けます。
この際、(自分が人体錬成を行うことで生み出した)エンヴィーと共に門の触媒となっており、彼なりのけじめをつけたと言えます。
2期ではホムンクルスとの最終決戦で体内の賢者の石を使い果たし、老衰のような形で穏やかな死を遂げます。
愛する妻であるトリシャの墓石の前で安らかに命を落とす2期の第63話は、エンディングの入りの絶妙さもあってファンの間で名シーンとされています。
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参考資料
『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST STORY』(TVアニメ「鋼の錬金術師」公式サイト)2021年7月25日検索