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伏線が見事な「夕陽のカスカベボーイズ」
クレヨンしんちゃんの映画にはたくさんの名作がありますが、
伏線や展開のまとまりの良さは「映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ」が最高傑作だと思います。
タイトルの「夕陽」にふさわしく、日が傾いていく時間軸の中できれいにストーリーが進行していき、その中で回収されていく伏線が子供向けアニメながら非常に気持ちのいい作品です。
「夕陽のカスカベボーイズ」のあらすじ
街の片隅にある古びた映画館。
そこで誰もいないのに上映されていた西部劇の映画を見ていると、いつの間にかしんちゃん達は見知らぬ荒野に立っていた。
映画で見たような西部劇の世界。
ここはどうやら映画の中の世界のよう。
元の世界に戻るにはどうしたらいいのか?
くり返されている映画のワンシーンのような毎日の中で、不思議と元いた世界や自分の記憶を失っていく。
失われていく記憶に抗いながら、野原一家やカスカベ防衛隊の一同は元の世界に戻る手掛かりを探していく。
伏線の解説(ネタバレあり)
時間が止まっている世界
野原一家が見知らん荒野に立つ序盤のシーン。
いつまで歩いても照りつける太陽の下の荒野は一向に景色が変わらず。
辺り一面どれだけ歩いても荒野なのは、ここが映画の世界であり外の世界が存在しないから。
そしていつまで経っても太陽が登っているのはここが時間が止まった映画の世界だから。
野原一家がすぐに街に着かず歩き続けるシーンを入れることで、この世界の設定を表現していますね。
3つの謎の扉
謎の扉が3つ。
意味深な扉の存在だけでなく、この扉が3つあることがポイントですね。
巨大ロボット
後半で出てくる巨大ロボット。
これはわかりやすい伏線。
忘れたフリをする風間君
この世界に長くいればいるほど人々は記憶を失っていきます。
野原一家より先に来たカスカベ防衛隊は確かにしんちゃんより記憶が失われているかもしれません。
しかし、はるか先に来たマイク水野(野原一家とよく行動する太った男の人)が「自分は外の世界から来た」ことを覚えているのですから、風間君の記憶が完全に消えているのは不自然ですよね。
この矛盾が「風間君が忘れたフリをしていた」というヒントになっています。
忘れられた決め台詞
カスカベ防衛隊の決め台詞を忘れるしんちゃん。
マイク水野が言うように、忘れることも怖いですが、「忘れたことを忘れること」はもっと怖いことです。
「夕陽のカスカベボーイズ」はこの「自分や大切な人を忘れる怖さ」がある作品です。
禁止区域を設けるジャスティス知事
街の外に出ることを禁止するジャスティス知事。
マイクがにらんだ通り、元の世界に戻るヒントは街の外にあるわけです。
そして、人々が元の世界に戻ることは、ジャスティスの今の地位を脅かすことにつながるわけですね。
「ぶりぶりざえもん」が思い出せない
だんだんと記憶を失っていくしんちゃん。
進み出す時間と戻ってくる記憶
「元の世界に戻る方法のヒントが見つかった」ということを、「時間が進み始めた」ということで確信する一同。
非常に興奮する盛り上がるシーンですね。
時間と共にストーリーが進行
そしてだんだんと日が暮れていきます。
カスカベ防衛隊、ファイヤー!
記憶が戻ったことで力を発揮するカスカベ防衛隊。
舞台は夜になっています。
3つの扉の意味
3つの扉に封印されていたのは「お」「わ」「り」。
つまり「おわり」。
扉が3つあったのもポイントですね。
映画の終わりを告げるのが「おわり」という言葉であるのがギャグのようなオチでですが、いい展開ですね。
封印されていたものがあまり仰々しすぎると逆に覚めてしまいますし。
このくらいがちょうどいいなあと思います。
椿ちゃんの正体
そしてもう1つオチが。
少し切なそうに微笑む椿ちゃん。
映画の中の存在である椿ちゃんにとって、しんちゃん達が元の世界に帰ることは別れを意味します。
靴を履いた椿ちゃん
そしてエンディング。
本編の椿ちゃんは裸足でしたが、ここでは靴を履いています。
本編で裸足なのは裏設定で、「椿ちゃんはジャスティスの命令に対してミスをした過去があり、それ以来罰として裸足になっている」から。
エンディングはハッピーエンドということで靴を履いているのだそうです。
おわりに
以上のように伏線が豊富な「夕陽のカスカベボーイズ」
ちなみに見る人からすると、「椿ちゃんはシロだったのではないか」解釈する人もいますが、監督本人としてはその説は否定されているようです。
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