小説および映画「かがみの孤城」に関するページです。
ネタバレを含みますのでご了承ください。
真田美織のその後
こころをいじめて不登校に追いやった真田は、次年度こころと別のクラスにするという措置を学校側からとられます。
言及はされないものの、ここまで学校が動いたということは真田の教師間での評価も今後は慎重になるでしょう。
この措置は実際的にこころが学校に通うことに寄与するわけですが、こころを追い詰めた真田に対する天罰と考えるとぬるさが否めず、
「真田はもっと罰を受けるべき」という感覚を見る人によっては持つかもしれません。
しかし個人的には、
真田がそこまで罰を受けていない点はリアルな描写だなと思いますし、この落としどころの塩梅が「かがみの孤城」という作品の魅力だと思います。
解説
こころと真田
恋愛関係(池田)や友人関係(東条萌)など、人間関係をきっかけに真田に目を付けられ、いじめられたこころ。
(後の東条萌の対応と比較すると)こころは内気なところがあり真田のような生徒に目を付けられやすかったのかもしれませんが、それを差し引いてもこころは自身に非がないと言える一方的ないじめを真田から受けることとなります。
喜多嶋先生のはたらきかけもあり、
- 次年度、真田やその友人達とこころは別のクラスにする
- (いじめに理解がなかった)担任の伊田も変えてもらえるようにする
といった配慮がなされます。
かがみの孤城が考えるいじめについて
理解し合えない人間とは無理せず適切な距離を置く。一人で悩まないで理解してもらえる人を頼る。
そういった現実的な落としどころをかがみの孤城は教えてくれている気がします。
こころが不登校になった理由は言わずもがな真田のいじめであり、真田の存在はこころの学校生活に大きな影響を与えました。
しかしながら、終盤の萌との会話で示唆されている通り、真田のような人間は別の場所でもいる可能性があります。
真田が勧善懲悪のごとく天罰を受ければすっきりするかもしれませんが、そうではなくクラスを変えるというリアルな結末になっている点が、かがみの孤城の深さであると思います。
そういった教訓を意識してか、鍵によってこころの「真田の存在を消す」という願いを叶えると、孤城でのみんなとの記憶が消えてしまうという天秤を作っている点もかがみの孤城の見事な設定だと思います。
真田のその後
こころのいじめの一件で、真田は先生達から「(こころと同じクラスにしてはいけない)配慮しないといけない子」と見られるようになりました。
こころが受けた精神的なダメージを考えると、真田のその後・結末は釣り合わない気もしますが、少なくとも真田はそれまでと同じ優等生キャラでいられなくなったでしょう。
伊田がこころの担任を外されたことから、「こころと真田の件について伊田の対応はまずかった」と学校側が認識していることは明らかです。
真田の学校でのその後の立ち位置について具体的には描かれてはいませんが、教師達が真田やこころについて「慎重に対応しないといけない」という認識に至ることは想像に難くありません。
真田は陰でこころをいじめながらも、表では委員をするような「外面の良さ」も持っていました。
本人からしたらそういった二面性を使い分けている気になっているのでしょうが、今回の一件で教師達は真田を警戒することでしょう。
中学生ごときの二面性は、結局多くの場合大人から「見透かされてしまう」ということも、かがみの孤城の示唆なのではないかと思います。