アニメ「鋼の錬金術師」について一部ネタバレも含みますのでご了承ください。
ラストの1期と2期の違い
ラストはエルリック兄弟に味方をするという展開が、1期と2期の最も大きな違いとなります。
アニメオリジナル展開の1期では、ラストはスカーの兄の恋人をベースにしたホムンクルスとして登場し、それゆえにホムンクルスである自分に葛藤します。
原作準拠の2期ではあくまで色欲の名を冠し最強の矛を持つ冷静なホムンクルスであり、マスタングとの交戦にて死亡します。
解説
生い立ちの違い
1期と2期ではホムンクルスの設定が大きく異なり、ラストもこの生い立ちの違いが最後まで本編に影響します。
スカーの兄の恋人をベースに生まれた1期のラストは、人間の頃の記憶がフラッシュバックすることで「人間になりたい」と葛藤します。
そして1期の黒幕であるダンテが自分達を利用しているだけだと悟ると、自力で人間になるために反旗を翻します。
利害の一致という関係ではありますが、上記の背景からラストはエルリック兄弟と共闘することになります。
戦いの中で同族であるラース(イズミの子をベースにしたホムンクルス)を追い詰めるも、弱点を突かれ賢者の石を消耗、その後ラースによって殺されてしまいます。
賢者の石を吐き出す過程で苦しみながら死んだラストですが、人間になるという願望はつまり限りある寿命を全うし「死ぬ」ことであったと悟り、ある種の満足感を持ってこの世を去ります。
出番の違い
原作準拠の2期では、やはりマスタングとの戦いがラストの最も印象的な回ではないでしょうか。
全64話ある2期において、マスタング戦は第19話にあたりこの回でラストは死亡します。
このように、2期では派手な戦闘と早期退場のもったいなさが印象的なラスト。
一方で、1期のラストはもっと内面の描写が多い印象を受けます。
賢者の石で不老不死に近い状態で生きることができるホムンクルス。
それでも人間になりたいラストに対して、エドはなぜ人間になりたいのかと聞きます。
このエドの問いに対し、鎧で疲れることのないアルを例に出し「残酷なことを言うのね」とラストは返します。
1期のラストはホムンクルス側から見た人間へのあこがれや羨望をダークに表現しており、非常に示唆のあるキャラとなっています。
メタ的な違い
1期のラストはホムンクルスの様々な描写を原作よりも一人で担っている印象を受けます。
これは1期が原作連載の途中の作品であったため、原作ほど登場人物が多様でない点が関係すると思います。
人間に嫉妬していたエンヴィーや、人間の温かさを求めていたプライド、エド達に味方するグリード。
2期ではホムンクルスと人間の関りは比較的分担されて描かれますが、1期ではホムンクルスの設定が異なるためこういった描写があまり見られません。
結果として序盤に登場したラストがこれらをまとめて担うことになっている印象を受けます。
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参考資料
『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST STORY』(TVアニメ「鋼の錬金術師」公式サイト)2021年7月25日検索