アニメ「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」のページです。
一部ネタバレも含みますのでご了承ください。
【目次】 [close]
お父様はどうすればよかったのか?
ホムンクルス「戻りたくない。
嫌だ。
やめろ、そこに縛られ続けるのは嫌だ。
嫌だ、嫌だ、嫌だー!」真理「思い上がった者に絶望を」
ホムンクルス「私はどうすればよかったのだ!?」
真理「お前が望んだ結末だ」
ホムンクルス「どうすればよかったのだ!?」
真理「お前はその答えを見ていただろうに……」
「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST episode63」(Abema TV)より引用
エド達に敗れ、真理の扉の前に連れ戻されたお父様こと「フラスコの中の小人ホムンクルス」。
真理の扉の中に引きずり込まれる中、ホムンクルスは「私はどうすればよかったのだ!?」と問い、真理は「お前はその答えを見ていただろうに……」と言うだけで明確な答えを言わないまま終わります。
フラスコの中の小人ホムンクルスの「私はどうすればよかったのだ!?」の答えは、物語の文脈を考えると「他者の存在を認め、仲間や家族の大切さに気づくこと」だったのではないかと考えられます。
解説
地下でのホーエンハイムとホムンクルスの交戦
ホーエンハイム「人には7つの罪があると言う。
確かに過ぎた欲は身を亡ぼすが、その一方でそれらの感情全てが、人間を理解するためには欠かせぬものであるはずだ。
なぜ切り離した?」(中略)
ホーエンハイム「答えろ!
なぜホムンクルスを作り、そばに置き、父と呼ばせた!?
フラスコの中にいた頃のお前は、家族というコミュニティを小馬鹿にすらしていたのに。
お前本当は、人間のように家族が欲しかったのではないのか?」(中略)
お父様「私は人間になりたいのではない。
完全な存在になりたいのだ」「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST episode55」(Abema TV)より引用
ホーエンハイムがお父様の核心をついたシーンとして、第55話が挙がるかと思います。
クセルクセス時代からお父様を知るホーエンハイムは、その後の行動も踏まえ、「家族が欲しかったのではないのか?」と指摘します。
これに対してお父様は黙り込むだけで明確に否定の言葉を発しません。
その後に「完全な存在になりたいのだ」と主張はするものの、「ホムンクルス達にお父様と呼ばせたこと」については説明できないまま終わります。
ホムンクルスはお父様から切り離された欲
エンヴィー、お前、人間に嫉妬してるんだ。
人間は、お前らホムンクルスよりずっと弱い存在のはずなのに、叩かれてもへこたれても、道を外れ倒れそうになっても、何度でも立ち向かう。周りが立ち上がらせてくれる。
お前は、そんな人間が羨ましいんだ。「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST episode54」(Abema TV)より引用
プライド「つまらないことを聞きますね。
生み親に従うのは、当たり前じゃないですか」エド「つまんねぇのはそっちだ。
当たり前だって?
自分の頭で考えようとしない思考停止野郎が!
(中略)
わっかんねぇ。
なんでお前があいつの言いなりになってんのか。
お前がそんなボロボロになっても、気にも留めないんだぞ」プライド「だからどうしたというのです?
君達人間の常識を、私達ホムンクルスに、当てはめないでください!」「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST episode61」(Abema TV)より引用
リン「グリード、お前が欲してやまなかったもの、本当はこれだ」
グリード「ああ、そうだ、俺が欲しかったのは……
こいつらみたいな仲間だったんだな」「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST episode62」(Abema TV)より引用
グリードなどが特に顕著ですが、ホムンクルス達の欲求は人間に向いている様子がうかがえます。
エンヴィーは人間に嫉妬し、プライドはブラッドレイ夫人を通してどこか家族や母の温もりを求めています。グリードは仲間を求めていました。
ホムンクルス達はお父様から切り離された七つの欲であり、その欲はお父様の欲を反映していると考えることができます。
このため神になると言葉では言っていたお父様ですが、内心は自分でも認められないところで人間(他者)とのつながりを求めていた節があります。
真理の示唆
ホムンクルス「なぜだ、なぜ私の物にならぬ?
神よ、何が気に入らないのだ?」真理「お前が己を信じないからだ。
他人の力を盗み、人から生まれた者のくせに、神とやらにしがみついていただけだ。
お前自身が成長しておらん。
七つの欲を切り離せば、人を超えられるとでも思ったか?
笑わせるな」「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST episode63」(Abema TV)より引用
クセルクセスにいた頃から、ホーエンハイムという「人とのつながりを大切にする生き方」を目の当たりにしていたはずのお父様。
しかしお父様は「自分にない力」ばかりを求め、他者を小馬鹿にし、結局は自分の存在も他者の存在も受け入れることができませんでした。
こうして自身が成長できなかったお父様ことフラスコの中の小人ホムンクルスは、再び真理の扉の中に縛られることとなります。
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参考資料
『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST STORY』(TVアニメ「鋼の錬金術師」公式サイト)2021年7月25日検索