チ。-最終回の神父(司祭)の正体について-|地球の運動について



最終章に登場した司祭

チ。 ―地球の運動について― 第25話『?』(ABEMA)より引用

 「チ。」最終章で登場した司祭は異端審問官の新人と同一人物と思わせつつ、あえて解釈の余地を残すような描かれ方をします。

 いずれにせよこの司祭は本作において、「チ。」の対立する2つの考え(疑念・信念)や2つの勢力(異端審問官・地動説支持者)を両立させた結論を導く重要な役割を担います。



解説

アルベルトと会話をした神父の正体

チ。 ―地球の運動について― 第10話『知』(ABEMA)より引用

 最終章でアルベルトと会話をした神父(司祭)は、第2章で登場した異端審問官の新人、「レフ」と解釈することもできます。

 ノヴァクが教育係となった異端審問官の2人。本編で人物名は言及されませんがエンディングの表記から一方が「レフ」、他方が「シモン」であることが確認できます。

 シモンはヨレンタを逃がし、その後にアントニらによって殺されてしまいます。そしてこれをただ見ていることしかできなかったレフ。

 「友人を見殺しにした」「友人がある仕事で重大な違反を犯してしまった」「その結果彼は死んだ」など、司祭の話はレフの立場と一致します。

 また、この司祭の容姿は影に隠れて全貌は見えませんが、ある程度歳を重ねている様子。

 第2章から第3章は25年ほどの歳月が流れており、容姿のイメージとしても一致するでしょう。(最終章はドゥラカ手紙の描写から第3章からそれほど時間は経っていない様子)

 またそもそも論ですが、レフと司祭の中の人(声優)は同じであるため、明らかに同一人物に見せようとしている演出がうかがえます。


パラレルワールドという解釈

チ。 ―地球の運動について― 第25話『?』(ABEMA)より引用

 レフに限らずですが、「チ。」の第1~3章と最終章は、同じ世界線とは言い切らせない(むしろ別の世界と見せる)描写をしています。

 舞台が「P王国」から「ポーランド」になっている点や、(死んだはずなのに)同じ名前・容姿のラファウが登場している点などがその例となります。

 最終章に登場した司祭についても、明らかにレフを想起させる描写をしていますが同時にレフと断定させない描き方が見て取れます。

 考えて見れば、「友人を見殺しにした」「友人がある仕事で重大な違反を犯してしまった」というのはシモンのことと断定できるほど具体性はありません。

 概して、司祭は「レフと同じ人に見える・レフと同一人物と思うと考えさせられる人物」として描かれています。


司祭から考える「チ。」の結末

 今、たまたまここに生きた全員は、たとえ殺し合うほど憎んでも、同じ時代を作った仲間な気がする。

チ。 ―地球の運動について― 第23話 同じ時代を作った仲間(ABEMA)より引用

 このように「チ。」は(おそらくあえて)第1~3章と最終のつながりを曖昧にしたまま描かれます。

 しかしながら、仮に「司祭とレフは同一人物」「ドゥラカの手紙がポトツキの住所に届いた」と考えると、なかなか深い結末だなぁと思います。

 アルベルトは司祭の言葉により大学に行く決意をし、街中で聞いた「地球の運動について」という言葉で「?(タウマゼイン)」を感じます。
 そしてこれが地動説の確立につながっていきます。

 つまり、本来敵対関係にあった天動説の信仰者(異端審問官)と地動説の信仰者の双方の存在があってはじめて地動説が受け継がれます。

 ノヴァクの最期、幻のラファウが言った通り、「同じ時代を作った仲間」と言えるのでしょう。



チ。-最終回の解説について-

「チ。」最終回の考察  「チ。-地球の運動について-」は第1~3章までは架空の王国「P王国」を舞台に、最終章はポーラン...



参考資料

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