「チ。」最終回の考察
チ。 ―地球の運動について― 第25話『?』(ABEMA)より引用
「チ。-地球の運動について-」は第1~3章までは架空の王国「P王国」を舞台に、最終章はポーランドを舞台に描かれ世界線が切り替わる構成となっています。
最終章の主人公であるアルベルトは、司祭の「矛盾は両立する」という言葉に影響を受けます。
本作自体もこの考えを体現するように、「P王国とポーランド」「ドゥラカ達とアルベルト」のつながりについてあえて解釈を残す形で締めくくられていると考えられます。
解説
難解な最終回
チ。 ―地球の運動について― 第19話 迷いの中に倫理がある(ABEMA)より引用
チ。 ―地球の運動について― 第25話『?』(ABEMA)より引用
「チ。-地球の運動について-」は、ラファウ・オクジー・ドゥラカを主人公とする第1~3章、アルベルトを主人公とする最終章(第4章)で構成されます。
第1~3章は激しい異端排除など「地動説を元ネタとしたファンタジー(明らかなフィクション)」としての色合いが強いです。
一方で、ポーランドを舞台に実在する人物「アルベルト・ブルゼフスキ」が登場する最終章は「史実に矛盾のない範囲での淡いフィクションないし歴史漫画」的な様相となっています。
当然ながら、この展開だと読者・視聴者としては「第1~3章と最終章はパラレルワールドなのか?」「ドゥラカの手紙が届いた描写があるから同じ世界線なのか?」といった疑問が湧きます。
矛盾を両立させる展開
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どちらか選択する必要がありますか?
疑念と信念。
2つ持っていて、不都合が?
(中略)
肉体と魂。理性と信仰。哲学と神学。疑うことと信じること。
これらの矛盾は両立します。
なぜか。それが人間だからです。チ。 ―地球の運動について― 第25話『?』(ABEMA)より引用
最終回、司祭とアルベルトの会話にて、司祭は矛盾が両立することについて語ります。
これに気づきを得たアルベルトは、父も先生も要するに「極端」であり折り合いをつけることが大切だということを学びます。
「疑いすぎても信じすぎてもダメ。要するに何事もバランスが大切だ」という価値観は、第三者的に引いて見れば多くの人が納得する考えではないでしょうか。
しかしながら、これが自分の身になるとそういったバランスを保つことが難しいのも人間の性と言えます。
バランスを取った思考に行きついたアルベルトを理解しながら、物語の結末自体の矛盾は視聴者としては許容できない。「これはどういう結末なんだ」と白黒はっきりさせないと気が済まない。
「チ。」はそういった人が陥りがちな考えに気づかせる作品ではないかと思います。
「チ。」の最終章は第1~3章とまったく別の物語として見ることもできますし、実はつながっている世界線とも思えます。
どちらであっても矛盾せず、だからこそ結末の曖昧さに視聴者は悩まされます。
しかしながら、「どちらの解釈の余地もあり、視聴者それぞれが考える結末となっている」という「矛盾を両立」する締め方と考えると、本作は深いなぁと思います。
最終回の解説