小説および映画「かがみの孤城」に関するページです。
ネタバレを含みますのでご了承ください。
こころの母親の対応
こころの母親が喜多嶋先生の介入を通して変わっていく様子は、「かがみの孤城」における示唆の1つだと思います。
序盤のこころに対する否定的なシーンにより、「理解がない」「冷たい」印象もあるこころの母親。
しかし個人的にはこころの母親は「知識がなかった」だけでひどい母親というわけではなく、むしろこころを支えた重要な存在であったと思います。
解説
こころの不登校
不登校のこころに対する当初の母親の対応は不適切ではありますが、母親自身の戸惑いもあったのではないかと思います。
真田のいじめによって不登校となったこころ。
精神的に追い詰められ、朝になると腹痛という身体症状まで表れます。
こころが主人公であり不登校は本人の「甘え」でないことがわかっている視聴者から見ると、うんざりしながら欠席の電話をかける母親はなんとも否定的で冷たい印象を受けます。
しかしながら、一般的に子を持つ親が最も避けたがるのは、我が子が学校に行かないことが「習慣化する」ことではないでしょうか。
このように考えると、こころの母親は「娘を甘えさせていはいけない。少なくとも学校に行かないほうが楽と思える状況を作ってはいけない」と心のどこかで思っていたのかもしれません。
当然こころの母親のこころへの対応は適切ではなかったわけですが、こころにフリースクールを勧めるなど(結果的にこころは喜多嶋先生と出会うのでこれはファインプレーだったわけですが)母親なりに試行錯誤していた様子は見て取れます。
母親と喜多嶋先生
「かがみの孤城」は心に傷を負った子供達を支える上で、親の支援がいかに大切なことかを地に足を付けて描いていると思います。
子供達自身へのはたらきかけはもちろん大切ですが、子供達が置かれている環境、最も身近に接する親への支援や指導・助言は非常に重要です。
物語の中で喜多嶋先生はこころの母親にはたらきかけ、母親は娘への接し方を変えていきます。
このような変化の中でこころは(孤城での経験も大きかったでしょうが)母親にいじめのことを打ち明けます。
かがみの孤城は中学生らが鏡の中の孤城に集うというファンタジーな世界観を描く一方で、不登校児の親支援などリアリティのある描写が興味深いです。