「クレヨンしんちゃん 激突! ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」に関してネタバレ含みますのでご了承ください。
ラクガキングダム最大伏線
シリーズ28作目となる「映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」。
ラクガキングダムの最大の伏線はしんちゃんがスケッチブックをユウマの家(飲食店)に忘れることだと思います。
これによりユウマはクライマックスでしんちゃんのスケッチブックを見つけることになり、作品のメッセージ性につながると考えられます。
解説
しんちゃんのスケッチブック
作中にて、ユウマの家にたどり着き空腹を満たしたしんちゃん達は、その安堵もあってかうっかりスケッチブックをユウマの家に忘れてしまいます。
しかしながら、ミラクルクレヨンは壁や地面に書いても同様の効果が得られるので、スケッチブックを忘れたことの支障は何もなく物語は進行します。
そしてラクガキングダムの住人達との戦いは一件落着し、しんちゃん達は日常へと戻っていきます。
帰宅したユウマは、しんちゃんやブリーフ達と冒険しそれが終わったことに少し寂しさを覚えます。
ふとお店のカウンターを見ると、そこにはしんちゃんのスケッチブックが。
しんちゃんのうっかりに呆れながらもページをめくるユウマ。
スケッチブックには自分も含んだ一同の似顔絵があります。
その絵を見ながら、ユウマは寂しさと温かさを感じながらしんみりと涙します。
ラストシーンのスケッチブックの意味
ラストのスケッチブックの絵を見るユウマは、この作品の大切なメッセージを含んでいるのではと思います。
ラクガキングダムは、子供達がゲームやタブレットのせいでラクガキをしなくなった。つまりデジタルな活動に心奪われアナログで創造性豊かな活動がなくなっているというメッセージ性の下で物語が始まります。
創作物にありがちなデジタル・テクノロジー批判ですね。
これに対し、自由にラクガキをするしんちゃんが「勇者」に選ばれます。
ラクガキングダムの大部分は、しんちゃんを通して創造性のあるアナログな活動を支持する価値観を描いていきます。
しかしこれがエピローグ的なユウマと姫のシーンで一転。
ユウマがタブレットを使いネット上のラクガキサイトを姫に見せます。
ネットの世界、デジタルな世界でも子供のラクガキや創造性は存在することを姫は知ります。
道具が変わっても子供達の心は変わらないという、時代の変化を受け入れるメッセージ性が読み取れます。
しかし最後にさらにもう一演出。
しんちゃんのスケッチブックを見て涙するユウマ。
アナログなお絵描きが人の心に響く演出を通して、デジタルもいいけれどアナログにもいいところがある。デジタルとアナログどちらかだけで網羅できるわけではないという解釈を感じます。
このように、ラクガキングダムはデジタルとアナログに対するメッセージ性が見え隠れします。
ラクガキングダムのデジタルとアナログ双方の魅力を描くやり方は、「オトナ帝国」の「過去もいいけれど未来も大切だよね」という双方の主張をしっかり魅力的に見せる手法と似ているなと感じます。