クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン 〜失われたひろし〜
新婚旅行ハリケーンは、歴代クレしん映画の中ではそこまでおもしろくはない中~中の下の作品かなと思います。
ところどころ良いシーンはあるものの、全体としては世界観の甘さというかざっくりとした感じが目立ちます。
子供が見るぶんはいいかもしれませんが、大人がわざわざ見るほどの魅力は正直にないかなと思います。
解説
世界観の甘さ
クレヨンしんちゃん映画で名作と言われるものはいずれも世界観がしっかりしていると思います。
ふざけた組織の名前やテクノロジーの中にも、どこか一環としたものがあってギャグなのにどこかリアリティも感じる仕上がりになっています。
こういった変に納得させられるトンデモ科学の魅せ方が新婚旅行ハリケーンにはない気がします。
筋肉隆々の原住民と、なぜ一般市民であるみさえや子供であるしんちゃんが対等に戦えるのか謎ですし、物語のキーとなる秘宝もリアリティーに欠ける印象です。
いや、クレしん映画に元々リアリティーはないのでしょうが、そういったぶっ飛んだ世界観をそれでも「もしかしたらあるかもな」と思わせる丁寧な演出がないのですね。
こういった背景から物語に入り込めないというか臨場感を持ちにくい作品になっているなと思います。
新婚旅行ハリケーンのおもしろいところ
ただそんな新婚旅行ハリケーンも魅力的な点はあって、現代の価値観を取り入れた作風はしんちゃんらしいなと思います。
クレヨンしんちゃんは、ひまわりが生まれたりみさえが車の免許を取ったり一同がスマホを使っていたりします。
このように時代に合わせてフットワーク軽く世界観が変化するのは、同じ長寿アニメであるサザエさんやドラえもん、ちびまる子ちゃんとは異なる点かと思います。
新婚旅行ハリケーンはそういったクレヨンしんちゃんのスタンスがよく出ています。
結婚して子供が生まれてから行く新婚旅行や、(男女平等の価値観の下)助けられる男性と助ける女性。
本編のミュージカルシーンで保護者世代を意識した曲を使用する点も時代を意識しています。
また物語の中でみさえの身を案じるしんちゃんのシーンから、家族を大切にしつつも自分を犠牲にしてはいけないという現代の価値観が見えるなぁと思います。